最恵国待遇の取り消しとは
ロシアへの追加制裁として「最恵国待遇の取り消し」が報道されています。
世界貿易機関WTOの基本原則「最恵国待遇(Most Favored Nation Treatment、MFN)」とは、
すべての加盟国に対し同じ関税率を適用するルールであると新聞報道されていますが、
関税の仕組みを知ることで、より理解しやすいと思い、整理してみました。
▼世界各国の関税システムと最恵国待遇の関係について
GATT関税同盟が進化して現在のWTO関税が取り決められましたが、
各国の輸入関税率は、1商品1税率ではなく、輸入相手国ごとに税率が決められています。
関税率表をみると、
・GATT関税の時代から設定されていた基本税率(=General)と、
・WTOで取り決められた協定国向けの輸入税率(=MFNまたはWTO)
に分かれており、
WTO最恵国待遇の原則のもと、
WTO加盟国同士では、このMFNまたはWTO関税率が適用されていますが、
今回の取り消しで、基本税率(=General)になるという意味です。
▼たとえば、日本の関税率表を見ると
HS#0902.30.010 紅茶の場合
WTO協定税率 12%に対して、基本税率 20%
このように、「最恵国待遇の取り消し」で、基本税率20%が適用されるということです。
米国の場合、
北朝鮮とキューバには,敵対国として最恵国待遇を認めていませんが、
ロシアにも同等の扱いとし、30%超の高関税を課せるようにする方針と言われています。
▼WTOには特例関税もあります
開発途上国からの産品にのみ適用される特恵税率(=GSP)や
特定2国(又は地域)間経済協定締結国よりの輸入税率(=EPA)の場合については、
「最恵国待遇」の原則の適用外として、
世界全体の貿易振興のため、特定国間での関税取り決めが認められています。